オバカンの山
還暦後(オーバー・カンレキ)の山行記録
last update : 2021.02.28
【山  域】北アルプス・前穂高  奥又白池からA沢経由
【日  付】2010年7月18日(日帰り)
【時  間】上高地BT 5:50 → 明神 6:35 → 徳沢 7:10~7:20  → 
      奥又のパノラマ径と中畠新道の分岐 8:25~8:35 → 松高ルンゼと中畠新道の合流 9:45 → 
      奥又白池 10:35~10:50 → 踏替点 12:20 → 稜線 13:10~13:30 → 
      前穂高山頂 13:55~14:10 → 紀美子平 14:30 → 岳沢パノラマ 15:00 → 
      岳沢小屋 16:00~16:10 → 河童橋 18:00
【メンバー】単独行

ルート図
ルート(地図をクリックで拡大)

前夜、沢渡入りして車中泊。いつもは岩見平駐車場にお世話になるが今回は一番下の沢渡大橋から5:15始発のシャトルバスに乗って上高地入りした。
バスターミナルではパソコンで印刷した計画書を投函するだけで歩き始め、明神でトイレを借り、続けて徳沢でもトイレを借りる。還暦もとうに過ぎすっかり目も耳も遠くなったが、おかげでトイレだけは近くなった。
徳沢では、最近いつも休憩するベンチが濡れていたのは明け方にでも雨が降ったのだろうか。
ここまで気を付けて見てきたが誰一人としてピッケルを持った人には見かけなかった。


新村橋から見上げる前穂高
新村橋から見上げる前穂高

新村橋を渡り、少し行くと涸沢へのパノラマ径の分岐になるが、雪で通れないので進入禁止が張られた鎖をまたいで入っていく。奥又白谷の右岸堤防状のところは陽が当たって暑いがすぐに樹林帯の中となって日陰で涼しい。もうそろそろ休みたいと思う頃、樹林を抜けて松高ルンゼの出合となる。


パノラマ径から見上げる松高ルンゼ
パノラマ径から見上げる松高ルンゼ

松高ルンゼの中の雪は完全に消えているのに、この分岐だけは雪田が残って居た。でももう来週までには消えるだろう。奥又白谷側からの雪解け水も豊富に流れていて、休憩には良いところだ。
今年の5月、6月に来たときは、松高ルンゼはほぼ雪に埋まっていたが途中一箇所だけ滝が露出していてそれを登ったので、滝の様子は分かっている。雪が融けた今、それ以上の滝がないか肉眼で確認し、予定通り、中畠新道ではなく松高ルンゼを詰め上げる事にする。
出合から見える5m前後の3つの滑滝はいずれも右手(左岸)を水の横を越えていける。その先でルンゼは右に曲がっていくが、水量が減ったからか滝には苔が付くようになり3mの滑滝二つはやはり右手を越えていく。
最後の2段6mの滑滝だけは、下段を左手を登り、右へ水をまたいでいき、結局最後は左岸側を越えていくと中畠新道と合流する。時間的にはどちらを登ってもあまり変わらないかな?と言う気がするので、暑苦しい樹林の中の中畠新道より沢登りコースの方がお奨めという気がする。もちろん、これは岩や沢の心得のある人に限っての話しだ。
途中の滑滝は、いずれも左岸草付が巻径のように見えるがあれは巻径ではない。水の右横の乾いた岩を越えていくのが一番簡単だ。また、下降には使えない。滝を下るのにどうしてもザイルが欲しくなりそうだし、事実、古びた残置ハーケンが何本か有った。


前穂4峰と前穂高
2400m付近から見る前穂4峰と前穂高(中央)

中畠新道と合流後、樹林の中の径を抜けると時折雪が出て来たので滑らないように少し気を入れて歩くと径は左手へトラバースし、バッと視界が開けて奥又白池に飛び出す。


奥又白池から見る前穂高
奥又白池から見る前穂高
左手の3本槍の方が高く写っている
左下には、池に浮かんだ雪

今までの傾斜から解放されて平らな池の周りはまさに別天地であり、前穂北尾根の眺めは絶景である。
テントは全部で4張りあった。誰も居られない。皆さん、壁に向かって居られるのだろう。と、声がするので見上げると遙か頭上の雪の上を何人かの人が降りて居られるのが見える。
一休みしたら、池を左から回り込んで反対側に出たところから上部へと進んでいく。


2580m付近の尾根
池から一段上、2580m付近の尾根
左手の雪渓が消えるとお花畑になる

この池の上部は踏み跡もはっきりしているとっても気持ちの良いお花畑なのだが、今は雪が消えたばかりなのか花は全然無く、奥又白谷を覗き込める尾根上近くまで上がるとやっとコバイケのつぼみも大きくなり間もなく立派な花を咲かせそうだが、残念ながら今回は咲き誇る花には会えなかった。それでも、いよいよ間近になった前穂や北尾根の迫力は圧巻である。池まで来られた方は是非是非ここまで足を延ばして頂きたい。
踏み跡径ははっきりとしていてこの尾根筋上を更に上部へと続いているが、上部の露岩で径は消えて、左手のガレ斜面を登る事になる。このガレに入った途端、どこが踏み後か分からないし、不安定で崩れやすいが、幸い今回は雪が残っているので早速12本爪アイゼンを着けて登っていった。
ガレより遙かに歩きやすいのは確かだが、なんか変だ。夏の雪ではないのだ。梅雨明けというのにスプーンカットがほとんど発達していない。しかも表面はシャーベット状。(ザラメ状ではない)。突き刺すピッケルは、勿論スピッツェは刺さるが、シャフトが5cmぐらいしか刺さらない。まるで春先のクラストした雪の上に新雪が積もって1日2日経ったときのような雪質だ。スキーには都合良さそうだがアイゼンには少々つらい。実は、履いている靴が、TNFのVINDICATORと言うローカットシューズ、これではアイゼン蹴りこんで、と言う歩き方が出来ないので要領を得ぬ歩き方が続いた。
この雪面を詰めていくといよいよそこが踏替点という直下で雪が切れていて右の壁に逃げた。先ほど降りてこられた方々は、この岩を降りてこられたようだが、登るのなら雪の方が楽、と再びアイゼンを履いて10m程の雪面を登ると踏替点に出た。


踏替点から見上げるA沢
踏替点から見上げるA沢

そこから上、A沢は期待通り稜線までべったり雪がついている。足下は滝になっているのでA沢に取付いてから滑落するとえらい事になりそうだ。
A沢もこうして雪がついていると登りやすい。
上に、3人パーティが降りてこられ、最初の二人は軽アイゼンなのでラッペルで下り、3人目の人がその固定したロープを外した後、力強く踵の爪を利かせて降りて行かれた。
そのラッペルの支点にされた岩のところは、もう傾斜もなくなり目の前が稜線だ。その稜線に出てアイゼンを脱ぐが、ここはまだ前穂・明神の枝稜なので20m程進んだ主稜線に出て、休みを取った。ここでもうお世話になることの無くなったアイゼンとピッケルをザックに戻した。


明神岳
明神岳

残念ながら、明神岳は岳沢から常にガスが吹き上げすっきりしたシャッターチャンスを与えてくれない。
西穂の稜線も濃いガスが動いてくれないが、ここから見ると天狗岳や間の岳より西穂のピークは確かに頭一つ抜け出たなかなか格好いい山だ。
ここより先、前穂の山頂までは、踏み後もはっきりしているし、時折手は岩に触ってはいるがそれに頼って登るということもなく山頂へと進める。


前穂高頂上

そのやっと踏めた山頂も涸沢から向こうはガスが出ていて槍はおろか奥穂さえも見えない。残念だ。
あとは山頂からは上高地に向かって駆け下るだけ、と思っていたら、すでに下る力まで使い切っていたらしく、岳沢小屋まで2時間、そこから更に足が前に出ず、上高地まで3ピッチ(2回休憩して)2時間もかかってしまった。
もうこの歳には限界以上の山だったらしい。



【 足回り 】
本文中にも書いたが、靴はTNFのVINDICATORローカットシューズに12本爪アイゼン。
ローカットシューズ+Vibram底+GTXという条件で、後は足の形に合う靴、としてこれを買った。
この靴、平坦地や登りには実に快適だが、下りには何か不安?不満?があり、もう少しはき慣れる必要がありそうだ。
これに12本爪アイゼンで全く問題なかった(但し、家の近くの土の土手で何度も登行練習を終えた)が、アイゼンでの下降には全く不適な靴なので下山にも雪が出てくるルートでは使えない。
軽量化のために4本爪や6本爪のアイゼンもお店で見てみたが、4本爪はアイゼンワークでの足の置き方が全くイメージできなかったので却下。6本爪は多少イメージできるが、商品を触ってみると爪が袋を突き破って出てきそうで、これは、ザックに入れて持って上がったメロンパンが、買ったときと同じフワフワの状態のそんな山行きのフワフワザックでお使い下さい、と言うのがメーカからのメッセージだろうとこれも却下した。
登りではつま先側が、下りでは踵側が重要な荷重点なのに4本爪も6本爪もその重要な位置に爪がない。傾斜のある雪面の登下降には使えないと思う。
実際この日、岳沢の小屋の方のブログを見ると6本爪を着用した登山者が天狗沢で滑落、岩に激突事故、と報告されていた。今の穂高の雪は、例年の常識だけでは少々怖い気がする。

【 4回目でついに 】
この奥又白池から前穂にいたり、その日の内に上高地に下山できる、というこのルートを知ったのは2年前。
その年の8月はパートナーと涸沢に入ったので、9月に一人今回と同じ日帰りを試みた。
その時は踏替点から先、A沢上部1/3に雪渓があり、これがズタズタだった。
印象は、3~4m雪渓を進み、シュルンドに降りて1~2m進み、また目の高さほどある雪渓に這い上がり3~4m進んで、シュルンドヘ、というのを続けた。このとき、アイゼンもピッケルも無く、靴は、最寄りのスーパーで1000円でお釣りのある犬の散歩用靴だった。(この散歩靴、穂高の稜線歩きではバツグンの履きやすさであるが、悲しいかな、1日で靴底のグリップ力は無くなってしまう)
この雪渓をこなすのに全神経を使い切ったらしく、実際、踏替点から稜線に抜けるまで1時間40分もかかっている。このあと前穂に向かうのにヘトヘトで足が出ない。左手から重太郎新道が近づいてくる誘惑に負け、もうあと数十メートルで山頂というところで重太郎新道に逃げてしまい、岩に抱きつくようにして休憩して呼吸が整ってから下山した。だから山頂は踏めていない。
それでA沢にべったり雪があるときに、と、今年の5月、6月に2回臨んでみたが、はき慣れたとは言え、重い冬用の革の登山靴では速く(正確には、普通のスピードでも)歩く力無く、2回とも2300m付近から大パノラマを見て満足して下山した。それで、今回が4回目でやっと、前穂高の山頂に到達でき、足回りの軽量化(ローカットシューズ)にこだわった訳です。
今回無事山頂を踏めて2年前を振り返ると、よくあの靴だけでA沢の雪渓を越えていけたな、と言うことと、あれほどバテていながら上高地まで3時間で下っている、やっぱりあの犬の散歩靴の軽快さ、恐るべし。
山の道具、価格とは無関係? どれがベストか難しい。


 2010.07.18 北ア・前穂高に関する 掲示板  
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