【山 域】北ア・松高ルンゼから明神岳縦走
【日 付】2017年08月20日
【時 間】05:20 上高地バスターミナル
06:05 明神館
06:55 徳沢 ~ 07:05
08:15 松高ルンゼ出合(中畠新道分岐) ~ 08:25
09:55 中畠新道合流(2220m) ~ 10:05
10:50 奥又白池 ~ 11:00
12:15 A沢踏替点(2810m) ~ 12:20
13:20 A沢のコル(2970m) ~ 13:30
13:55 前穂高・明神岳最低鞍部(奥明神沢のコル)
14:30 明神岳主峰 ~ 14:45
15:00 2峰 ~ 15:15
15:45 4峰
16:20 5峰 ~ 16:25
16:40 5峰西南稜肩の台地テント場
17:00 森林限界のすぐ上(2480m付近)
17:15 西南稜のトラロープ帯開始(2340m) ~ 17:20
17:35 トラロープ帯終了
18:30 岳沢登山道7号標識 ~ 18:35
19:00 岳沢登山道入口
19:20 上高地バスターミナル
【メンバー】単独行
(地図はGPSログではありません。手書きです。)
![ルート図](./barn/20170820/map20170820maehoMyoujinRoute_s.jpg)
ルート(地図をクリックで拡大表示します)
日帰りで楽しむ明神岳縦走の第6ルート。 過去に5ルートは既に歩いているのでこれが最後のルートになる。 朝、バスで上高地に入って徳沢へ進み、涸沢や槍へ向かう多くの人々から離れて一人奥又白谷へ入っていく。 中畠新道の前半は利用せずに松高ルンゼの小滝と滑滝を楽しんでから中畠新道の後半を歩いて奥又白池に至る。その上部はA沢を通って前穂高と明神岳の稜線に出てやっと明神岳の縦走に入れる。 日帰りの明神岳縦走の6ルート中もっともアプローチの長い時間の掛かるルートだ。 日帰り(朝、バスかタクシーで上高地に入り、その日のうちにバスかタクシーで上高地から降りる)という条件が付くので時間制約がキツイ。 年々歩行速度が落ちている私にはこの「日帰り」という時間制約はきつすぎた。 2013年8月に初めてトライしてすでに4年、もう11回も途中敗退している。 その11回目の敗退は半月前の8月6日、奥又白池まで上がったが、その先へは登る力がなかった。 年々、最高到達地点が下がってきている。このルートの日帰りはもう無理なんだと観念した。 上高地まで降りてきて、いつものように女房殿に無事の下山メールをし、もうこのルートは諦めるとも書いて送った。 すぐに返信が来た、「また登る機会ありますよ」と。 「エ~ッ!? まだ諦めるなと? キツイな~。 いつからうちの奥さん体育会系?」 ということで、どうせ今回もダメなのは決まっているけれどまたやってきた。 一応山に入るからには前回と同じ装備を担いでいる。 奥又白池の先のA沢で安全に雪渓登りが出来るように12本歯アイゼンとピッケルを持ってきた。 明神岳2峰の壁をトレランシューズで越える技術はないのでクライミングシューズもザックに入っている。 そしてもし明神岳5峰まで歩けたとしたら上高地から帰るバスに間に合うはずはないので、上高地から釜トンまで歩くことになる。その先、国道を沢渡まで歩くのは遠いし何よりも車が怖いので、釜トンから30分と掛からない 坂巻温泉 にお願いして駐車させてもらって上高地入りした。
![朝霞の河童橋](./barn/20170820/DSCN3403_s.jpg)
沢渡初発バスで着いた上高地は薄暗かった
朝霞の河童橋の向こうは何も見えない
でも今日は天気良いはず
![明神岳東稜を仰ぎ見る](./barn/20170820/DSCN3404_s.jpg)
ほら晴れてきた
明神岳東稜を仰ぎ見る
明神館手前の下白沢から
![前穂高から明神岳5峰](./barn/20170820/DSCN3410_s.jpg)
前穂高から明神岳5峰
徳沢の少し手前の河原から
今日も届かないだろうな
上高地から徳沢までは登り下りがほとんどなくウォーミングアップにちょうど良いぐらいに以前は思っていたが、
最近はここで頑張ると後が続かなくなってしまった。
ここ1~2年で登山スタイルも変わってしまった。
靴はトレランシューズ、手にはダブルストック、ザックにはチロンチロンと熊鈴を付けている。
人が付けている熊鈴は大嫌いなので自分の鈴も好きではない。今日は鈴はやめて笛にした。
![朝の徳沢テント場](./barn/20170820/DSCN3413_s.jpg)
朝の徳沢テント場
8月の日曜日の朝というのにテント少ないですね
この夏は天気悪いからしかたないか
![新村橋から前穂高北尾根を仰ぎ見る](./barn/20170820/DSCN3414_s.jpg)
新村橋から前穂高北尾根を仰ぎ見る
北尾根は主峰から八峰まで綺麗に見えます
![奥又白谷入口](./barn/20170820/DSCN3417_s.jpg)
奥又白谷入口
盆を過ぎたのに涸沢へのパノラマ径はまだ開通させていません
お陰で人が居ないのは嬉しいが
下草が刈られていないのは残念
![前穂高北尾根主峰から五峰](./barn/20170820/DSCN3418_s.jpg)
前穂高北尾根主峰から五峰
車道から離れると
次第に山歩きの雰囲気が出てきます
今日はどこまで登れるか知らないが
呼吸が上がらないゆっくりペースを
キープして歩いています
![中畠新道分岐点](./barn/20170820/DSCN3419_s.jpg)
パノラマ径の中畠新道分岐点
通常ここは8月一杯は水が流れています
中畠新道は中央右の尾根へ 松高ルンゼは正面
(写真クリックでルート表示)
前々回(今年の7月15日)は、奥又白谷の径で至近距離に熊が居たので、ここまでピーピー笛を鳴らしながら登って来た。
このパノラマ径の中畠新道分岐点周辺は谷が広く、奥又白谷の雪解け水がふんだんに流れていて実に気持ちいい。
新村橋から標高でちょうど300m登って来たことになるので梓川も下の方になる。
いつものようにここで行動食を摂り、空のペットボトル(500ml)2本に水を汲み、顔ににじんだ汗を洗い流す。
今年から使い始めた水の気化熱で熱を取る襟巻きを充分に濡らして首筋に巻いた。スーッと気持ちいい。
ここまではダブルだったストックの一本を収納し、ここからはシングルストックで松高ルンゼを登っていく。
(松高ルンゼ自体はⅠ~Ⅱ級の登攀ですが、どこを登るかの眼力は問われます。足跡のある岩場しか登ったことのない人には厳しいかも)
![では松高ルンゼへ](./barn/20170820/DSCN3422_s.jpg)
では松高ルンゼへ
中畠新道へは、右の壁に沿って右上へ
![岩床を楽しむ1](./barn/20170820/DSCN3431_s.jpg)
岩床をヒョコヒョコと
楽しそうでしょ
中畠新道分岐から20分ぐらいのところ
![岩床を楽しむ2](./barn/20170820/DSCN3433_s.jpg)
岩床を楽しんで登っていきます
楽しそうでしょ
中畠新道分岐から20分ぐらいのところ
![岩床を楽しむ3](./barn/20170820/DSCN3437_s.jpg)
まだまだ楽しさは続きます
中畠新道分岐から30分ぐらいのところ
![左右から夏草](./barn/20170820/DSCN3441_s.jpg)
左右から夏草が
でも沢底なのでブッシュ漕ぎはありません
![終点が見えてきた](./barn/20170820/DSCN3446_s.jpg)
松高ルンゼの終点が見えてきた
正面尾根上の三角に茂った樹木の裏側で
中畠新道と合流します
![ラッペル用残置シュリンゲ](./barn/20170820/DSCN3450_s.jpg)
ラッペル用残置シュリンゲ
松高ルンゼの登りは道具無しで楽しいですが
ルンゼの下降はお奨めしません
中畠新道分岐から1時間ぐらいのところ
![中畠新道との合流間近](./barn/20170820/DSCN3453_s.jpg)
中畠新道との合流間近
右上の丸い茂みの向こう側で合流です
![右側へ](./barn/20170820/DSCN3456_s.jpg)
右側を登ります
かなりきつい傾斜の小滝群です
![意外と厄介です](./barn/20170820/DSCN3459_s.jpg)
この小滝群、意外と厄介です
小滝群を諦めその右のブッシュを
5m程登って中畠新道に出たこともあります
![小滝群を見下ろす](./barn/20170820/DSCN3462_s.jpg)
小滝群を登って上から見下ろす
案外急です
疲れたり、岩慣れしていない人が居ると
ロープ出した方が無難かもです
![中畠新道と合流](./barn/20170820/DSCN3465_s.jpg)
でもそこは中畠新道との合流点
ホッとしますが炎天下で暑いです
今日は幸いガスで日射は弱く助かりました
中畠新道分岐からここまで1時間20分ぐらい
こんな感じで今回も松高ルンゼを登って来た。
奥又白池をベースに岩登りをしようかと言う人から見れば、
なんでわざわざそんなとこを登るの?という程度のルンゼ登りだ。
それは十分承知しているが、樹林帯の急登の中畠新道を行くぐらいなら、
岩床の小滝や斜瀑(と言っても水はないが)を遊びがてら登っていきたい。
なのでいつも私は中畠新道ではなく、松高ルンゼを登っている。
中畠新道に比べると、松高ルンゼは、小滝を楽しめるという以外何も良いことはない。
いつも背中から太陽にガンガンに照りつけられ、木陰など望むべくもなく、白い岩床からの反射は顔面にも暑く、眼はサングラスをしていないと痛くなる。
そして無風。たまにチョロチョロ流れる水があっても風呂の湯ほどに温くなっていて指先を浸けても冷却効果は全くない。
それに比べたら中畠新道は、ほとんどが樹林帯の中で木陰は随所にある。
奥又白谷の雪渓を吹き下ろす風も届く。
そして 径 なので2割程速く歩ける。と、良いことずくめだ。
それでも私は小滝登りが楽しめる松高ルンゼの方が好きだ。
そんな小滝登りを楽しむ松高ルンゼも一時間余りで終わってしまって中畠新道に合流すると、もうそこでフラフラってことが何度何度もあった。
松高ルンゼの標高差は350m程しかないのでそれを登ってバテるとは考えにくい。
おそらくあれは 熱中症 だったのではなかろうか。
中畠新道の合流点から2~30m下に樹林帯があって木陰で休めるのは知っているが、下へ休憩に行くのには抵抗があって、いつも2~300m先の木陰まで登っていた。
これではその先、奥又白池まで辿れてもそれより上へ登るパワーがなく敗退というパターンが今までは多かった。
今日は違う。
そもそも今日は敗退を前提に歩いているので計画通りの歩行速度ではなく、
疲れないよう息が上がらないようにゆっくり歩いていて、
ここまで登ってきてもそんなに疲れたという感じがない。
実際のところ各通過点の到着時間は前回(8月6日)に比べて遅れている。
徳沢で5分遅れ、
パノラマ径の中畠新道分岐、10分遅れ、
そしてここ松高ルンゼが終わって中畠新道の合流点、15分の遅れというゆっくりペースで歩いている。
しかも今日は、薄曇りのお陰で照りつけられるというきつい日差しはない。
木陰が全くなくても休憩出来る。
![百円行動食](./barn/20170820/DSCN3467_s.jpg)
百円行動食
醤油味が効いていて美味しかった
また買おう
水を飲み、行動食を口にして少し落ち着いたら次の目的地、奥又白池へ行きましょう。
ここからだと標高差で250mほど、普通なら一時間もかからずに行ける距離です。
![北尾根5・6のコル](./barn/20170820/DSCN3471_s.jpg)
前穂高北尾根5・6のコル
ガスって涼しいのはありがたいけれど
前穂高北尾根5峰さえ見えず
![奥又白池はもうすぐそこ](./barn/20170820/DSCN3475_s.jpg)
奥又白池はコル状を出たところ
あと5~60m
![ハ~イ奥又白池に到着](./barn/20170820/DSCN3478_s.jpg)
ハ~イ奥又白池に到着
![前穂高はガスの中](./barn/20170820/DSCN3479_s.jpg)
前穂高はガスの中
奥又白池には2パーティ3人が居られた。
涸沢のような雑踏はここにはない。心静かにゆっくりと山を眺めていられる。
前回(8月6日)はバテながらのなんとかここまで登って来て、ゆっくり休憩後ここから引き返した。
今もずっとここで休んでいたい気もするがゆっくり登っているので疲れては居ない。
今日はもう少し上を目指してみよう。
![奥又白池の上のお花畑 1](./barn/20170820/DSCN3484_s.jpg)
奥又白池の上のお花畑 1
![奥又白池の上のお花畑 2](./barn/20170820/DSCN3485_s.jpg)
奥又白池の上のお花畑 2
![お花畑から奥又白池を見下ろす](./barn/20170820/DSCN3487_s.jpg)
お花畑から奥又白池を見下ろす
奥又白池はそのすぐ上がお花畑です。
径は明瞭で危ないようなところはない。
上高地から奥又白池まで日帰りする人は多い
けれどその上のお花畑を訪れる人はほとんど居ない。
実にもったいないことだと思う。
奥又白池まで来られたら、是非、すぐ上のお花畑も訪れて欲しい。
そして晴れていれば、そこから見る前穂高4峰の壁の迫力に圧倒されて欲しい。
![奥又白池の上のお花畑 3](./barn/20170820/DSCN3490_s.jpg)
奥又白池の上のお花畑 3
![奥又白池の上のお花畑 4](./barn/20170820/DSCN3491_s.jpg)
奥又白池の上のお花畑 4
![A沢踏替点を目指します](./barn/20170820/DSCN3489_s.jpg)
A沢踏替点を目指します
奥又白谷を覗くように尾根を進みます
上部のガスは取れません 晴れていれば
前穂高北尾根4峰正面壁は目の前なんですが
![踏替点近くはガレです](./barn/20170820/DSCN3496_s.jpg)
踏替点近くはガレです
ガレを進むか草付きか悩みます
もう踏み跡もハッキリしないです
![A沢踏替点直下のガレ 1](./barn/20170820/DSCN3499_s.jpg)
A沢踏替点直下のガレ 1
![A沢踏替点直下のガレ 2](./barn/20170820/DSCN3501_s.jpg)
A沢踏替点直下のガレ 2
目の前のコルが踏替点です
![踏替点から登って来たガレを振り返る](./barn/20170820/DSCN3503_s.jpg)
踏替点から登って来たガレを振り返る
あっ残念、もう少し右からだと奥又白池が写ったのに
![踏替点からA沢を見る](./barn/20170820/DSCN3504_s.jpg)
踏替点からA沢を見る
ありがたい、上部まで雪渓が繋がっている
踏替点は細長いのでテント設営は無理ですが、数人がゆっくり休憩するスペースはあります。
ここでザックの底の方だったアイゼンを上の方へ位置変えしておきます。
雪渓の末端でアイゼンを着ける時に足場が悪くても荷物がバラケないよう早めの準備です。
ここでヘルメットもかぶりました。
![雪渓下部末端](./barn/20170820/DSCN3509_s.jpg)
雪渓の下部末端
足を置いただけで崩れそう
![雪渓下部末端から踏替点を振り返る](./barn/20170820/DSCN3510_s.jpg)
雪渓下部末端から踏替点を振り返る
![アイゼン装着](./barn/20170820/DSCN3513_s.jpg)
トレランシューズにアイゼン装着
手には手袋をはめ
ストックはピッケルに持ち替えて
いざ出発
![シュルンドは無い感じ](./barn/20170820/DSCN3515_s.jpg)
雪渓にシュルンドは無い感じ
盆を過ぎてスプーンカットも充分発達している
これなら登り易そう
![雪渓最上部](./barn/20170820/DSCN3518_s.jpg)
雪渓最上部
A沢はアイゼンのフラット歩行が困難な傾斜ですが
スプーンカットのお陰でフラット歩行も楽勝
![雪渓を振り返る](./barn/20170820/DSCN3519_s.jpg)
雪渓最上部から振り返る
理想的な雪渓状態であっさり最上部まできた
![A沢のコル](./barn/20170820/DSCN3522_s.jpg)
A沢のコルから先を見る
前穂高-明神岳の稜線は2~30m先
この辺は複雑な地形だ
下降の時やガスの時は初見では無理だろう
ついにA沢のコルまで上がってきた。
20~30m先の前穂高と明神岳の稜線にまで出て濡れたアイゼンとピッケルを乾しながら休憩する。
残念ながらガスで明神岳は見えない。
すぐ先の岩のピークさえもガスで消されることがある。
岳沢から吹くガス混じりの風が少し寒い。
ここは標高2970mぐらい。
まさか今日ここに届くとは思ってもいなかった。
上高地から標高差で1500m近く登ってきている。
それなりに疲れてはいるが、ゆっくりの歩行ペースをキープしてきているのでバテている感じは全くない。
上高地から距離で11km、8時間かかっている。
ここまでは長くて遠いアプローチ。
ここからがやっと明神岳への縦走になる。
長野県警に送付した計画書では、ここから明神岳へ向かうタイムリミットを13:30とした。
それ以降は前穂高へエスケープすると。
そのタイムリミット1分前に、前穂高を背にして明神岳に向かって歩き出した。
![すぐ下の岩峰](./barn/20170820/DSCN3529_s.jpg)
すぐ下の岩峰
岳沢側を巻くよりトップ近くまで登った方がよい
巻くと明神側で進みにくい
![明神岳はガスの中](./barn/20170820/DSCN3531_s.jpg)
岩峰を越えた
残念、明神岳はガスの中
岩場なので踏み跡はない、稜線を下降する
![前穂・明神の最低鞍部](./barn/20170820/DSCN3534_s.jpg)
前穂・明神の最低鞍部
最近はここを奥明神沢のコルと言うらしい
ガスで眺望がないので心待ち早歩き
![Ⅱ級の登り返し](./barn/20170820/DSCN3535_s.jpg)
コルの先はⅡ級の登り返しを楽しむ
岳沢側へ回り込むとⅠ級程度
その代わり高度感がある
![明神岳主峰と2峰](./barn/20170820/DSCN3540_s.jpg)
お~っ明神岳主峰と2峰が見えた
稜線はザレ場なので踏み跡がしっかりついている
![岳沢小屋と重太郎新道](./barn/20170820/DSCN3546_s.jpg)
岳沢小屋が見える
写真中央部右に消えるのが重太郎新道
![綺麗に整地されたテント場](./barn/20170820/DSCN3548_s.jpg)
綺麗に整地されたテント場
明神岳主峰から2~30m手前
![明神岳主峰](./barn/20170820/DSCN3555_s.jpg)
着いた~ぁ 明神岳主峰
周りには誰も居ない
山頂標識? そんな無粋なものはない
右奥は明神岳2峰
![ホシガラス](./barn/20170820/DSCN3550_s.jpg)
ホシガラス
初めての鳥撮
![ホシガラスに祝福されて](./barn/20170820/DSCN3552_s.jpg)
誰も居ない明神岳 彼だけが大きな声で
「よー来たよー来た」と出迎えてくれた
![前穂高を振り返る](./barn/20170820/DSCN3554_s.jpg)
前穂高を振り返る
一瞬だけ前穂高のガスが切れた
![明神岳2峰とガスの取れない3峰](./barn/20170820/DSCN3559_s.jpg)
明神岳2峰とガスの取れない3峰
明神岳は穂高の山群にありながら、前穂高、吊り尾根、奥穂高、ジャンダルム、そして西穂高と素晴らしい眺望が待っている。
目の高さだけではない、足元には梓川もある。
しかも他の人が居る可能性もほとんど無いのでその絶景を独り占めできる実に爽快なところです。
だが残念なことに、今回はガスで展望はない。
その代わり涼しいからこそここまで歩いてこられたとあきらめるしかない。
この先、明神岳2峰へは壁を登らなければならない。
Ⅱ~Ⅲ級の壁だけれど、私はトレランシューズで越えていく自信がないので、ここでクライミングシューズに履き替える。
ここまでのシングルストックもザックに仕舞う。
主峰からコルまでの下りはガレとザレでどんな靴を履いていても嫌なところなのにクライミングシューズは一層歩きにくい。
一応ザックのショルダーベルトにクイックドロー(ヌンチャク)やシュリンゲをぶら下げていくが使うことはない。
2峰の壁は、取り付は垂直か薄かぶりって感じだけれど、2~3m登ってしまうと一旦傾斜は落ち、
その先にある上段の壁は気持ちよく登っていける。
僅かに10分足らずのお楽しみで終わってしまう。
![主峰の下り斜面](./barn/20170820/DSCN3566_s.jpg)
主峰からコルへの下り斜面
![2峰への上段の壁](./barn/20170820/DSCN3567_s.jpg)
2峰への上段の壁
ここはチョー快適
2峰ではいつも前穂高と明神岳主峰のツーショット写真を撮っていたが、
2峰・前穂・主峰の3ピークのアングルがあることを知ったので今回はその写真を撮りたかったけれど
前穂はおろか主峰もガスで見えなかったので写真はあきらめた。
その2峰で再び着替えをしてトレッキングスタイルに戻って 膝サポータ も着けてシングルストックで歩き出す。
よく知った稜線のはずなのにガスの性か3峰の岳沢側の巻き径では僅かながら径をロストした。
![2峰側から見る3峰](./barn/20170820/DSCN3572_s.jpg)
2峰側から見る3峰
![3峰の巻き径から2峰を振り返る](./barn/20170820/DSCN3573_s.jpg)
3峰の巻き径から2峰を振り返る
3・4のコルから先、5峰の直下まではザレ径なので踏み跡はかなり明瞭に残っている。
整地されたテント場も2~3箇所ある。(但し、水はありません)
![4峰へ](./barn/20170820/DSCN3575_s.jpg)
4峰へ
踏み跡は明瞭です
![5峰が見えた](./barn/20170820/DSCN3578_s.jpg)
お~っ5峰が見えた
右下には上高地も見える
![5峰直下の要塞のような岩](./barn/20170820/DSCN3580_s.jpg)
5峰直下の要塞のような岩
登るもよし、右側を巻くもよし
![5峰のピッケル](./barn/20170820/DSCN3581_s.jpg)
お~ッ5峰のピッケル
まさか今日、ここまでこれるとは思ってもいなかった
![5峰](./barn/20170820/DSCN3582_s.jpg)
5峰、記念に私のザックも
晴れていれば
明神岳の主峰からこの5峰が見えるんですけど
残念です
明神岳5峰。ここが明神岳縦走の最後のピークです。
まさか今日ここまでこられるとはゆめゆめ思ってもいなかった。ありがたい。
「日帰りで楽しむ明神岳縦走 全6ルート」の達成ももうあとわずか。
でも、もう16時を廻っている。
あと2時間ほどで日没になる。
この5峰西南稜は何度も下っているが2時間半はかかる。
それだと完全に日没になる。
径のない5峰西南稜の日没は余りにも怖い。
ヘッドランプを使わずに一歩でも岳沢登山道に近づきたい。
幸いここまでは息が上がらないようにゆっくりペースで歩いて来ることが出来たけれど、ここからは下り一方、力限りに飛ばそう。
![5峰西南稜肩のテント場](./barn/20170820/DSCN3583_s.jpg)
5峰西南稜肩のテント場
![5峰西南稜森林限界](./barn/20170820/DSCN3584_s.jpg)
5峰西南稜森林限界のすぐ上
河童橋がよく見える
いつもはこの景色が好きで休憩するが今日は無理
5峰の頂上から肩のテント場までガレ場があるので過去何度かルート取りに失敗して難儀したことがあるが、
今日はすんなり降りてこられた。
疲れずにここまで歩いてきたつもりだったけれど、早足で歩こうとすると足が重い。
森林限界のすぐ上からは河童橋がよく見えるのでいつも休憩をするが、今日は残念ながらそんなことしていられる時間はない。
森林帯になると急に暑くなり、汗がにじむ。
その汗の臭いをかいで虫が一杯飛んでくるのでトラロープ帯上端(標高2350m)で虫除け液を首や襟を中心に顔にまで塗った。
![トラロープ帯開始点の明神南沢対岸の節理](./barn/20170820/DSCN3587_s.jpg)
トラロープ帯開始点付近の明神南沢対岸の節理
汗が出て虫がうるさいので薬をつける
![トラロープ帯最上部](./barn/20170820/DSCN3588_s.jpg)
トラロープ帯最上部
このロープに足を取られそうで嫌いです
右のコメツガが綺麗
いつ来てもここのトラロープは歩行の邪魔になって嫌いだ。
案の定、ピッケルがひっかかって転倒してしまった。
「むかつく~」なんて言って振り返っている暇もない、今は、一歩でも早く下へ降りたい。西南稜で日没はイヤだ。
トラロープ帯の下では真っ直ぐ進むと前明神沢に落ちる支尾根に入ってしまうところが2~3回ある。
そちらに入り込まないようにビンビンに神経を尖らせて下っていく。
前日大雨でも降ったのか、湿った土の上の落ち葉にだまされて滑って尻餅ばかりついている。
ズボンに付く泥のことなど気にしていられない。
西南稜の下降で暗くなってしまったらお手上げだ。西南稜での日没は怖い。ガンガン下っていく。
1本の倒木にでた。
確かここは岳沢登山道から30分ぐらいだったのでは?遠い記憶を辿る。
まだヘッドランプは出さなくても下れる。ガンバレ、岳沢登山道はそう遠くない。
樹林が禿げたように少し明るくなったひどい倒木帯にでた。
ここはたしか7号標識のすぐ上?
![岳沢登山道7号標識](./barn/20170820/DSCN3591_s.jpg)
着いた~~ぁ
岳沢登山道7号標識
ヘッドランプ無しで降りてこられた
もう暗いので写真がボケボケだ
頑張ったお陰で岳沢登山道7号標識になんとかへッドランプなしで降りてこられた。
ありがたい。
もう怖いものはない、が、
喉がカラカラだ。チョットお茶を飲んで息を整える。
ヘルメットをしまい、ヘッドランプを着けて、シングルだったのをダブルストックにして上高地へ登山道を降りていく。
岳沢登山道は良く整備されている。
暗いけれど、足場の石が白いのでヘッドランプは点灯せずに歩けている。
日没直後にヘッドランプを着けると光を目当てに虫が集まってくるのでそれを避けたい。
先ほどまで、下降とは言え、ガンガン飛ばしてきたのでもう足が重い重い。
岳沢登山道入口まで降りてきた。
もう真っ暗だけれどここからはジャリの車道、なんとなく道は分かるので、やはりヘッドランプは点灯せずに上高地へ向かう。
_ 河童橋 _
終わった。
4年越し、12回目で成就した 松高ルンゼから明神岳縦走 のこの計画。
真っ暗になってしまったけれど怪我することもなく元気に降りて来れた。
もう山容もハッキリせず、ただ黒い影となって映る明神岳に感謝する。
既に11回も失敗し一旦は「日帰り」を諦めたこの計画。
歩行速度が年々落ちているのを実感している。
還暦はとうに過ぎ、数えで今年「古希」になった私には「日帰り」はもう無理なのだ。
そんな計画だっただけに今回歩けたのは実に嬉しい。
それもこれも
もう一回行っておいでと背中を押してくれた女房殿に感謝です。
呼吸が乱れないようにマイペースで歩き通せたことに感謝です。
8月にしては涼しく、照りつけられずに松高ルンゼを登れたことに感謝です。
A沢の雪渓が充分に残っていてスプーンカットで歩きやすかったことに感謝です。
ストックのお陰で足場の悪いところでも上半身安定して歩けた。ストックを薦めてくれた方々に感謝です。
登りでも下りでもどれだけ歩いても爪先が痛くならず、岩場ではグリップ力抜群のトレランシューズに感謝です。
これらの感謝のどれ一つ欠けても、今こうしてここには立てていなかったでしょう。
ありがとうございました
上高地に最も近い穂高の山、明神岳。
その魅力あふれる 明神岳 に挑み続けさせてもらえた私は実に幸せな男です。
【 ルート上の難易度について 】
□ 松高ルンゼ 登攀技術としてはⅠ~Ⅱ級と感じますが小滝や斜瀑のどこを登るかの眼力(ルートファインディング)は必要です。 ですから北鎌尾根とかを登られた方は登れるはずですが、ルートファインディングが不要な北鎌尾根程度の経験しかない眼力では危険かも知れません。 □ A沢 今回は盆も過ぎていて充分に雨に打たれ、雪渓の表面もそこそこ固くスプーンカットも発達していて登り易かったです。 多分、トレランシューズでもチェーンアイゼンで登れたと思います。 しかし昨年(2016年)7月24日に登った時は、今回と同程度の雪渓の大きさ(長さ)でしたが、スプーンカットはなく、表面はシャーベット状でその下は固い雪質で登るにはかなり蹴りこみが必要でした。 この時はトレランシューズにチェーンアイゼンで歯が立たず怖くて降りてきました。 キックステップで登っていける固い靴底ならともかくアプローチシューズやトレランシューズの場合は8本歯以上のアイゼンをお奨めします。
【 日帰りで楽しむ 明神岳縦走 全6ルート 】
![ルート図](./barn/20170820/sixRoutes_s.jpg)
ルート(地図をクリックで拡大表示します)
□ 全6ルート とは 東西南北の4ルートとエクスパンションとして前穂高ルートと今回の奥又白池ルートがあります。 また「日帰り」とは、当日の朝、バスまたはタクシーで上高地入りして当日のうちにバスまたはタクシーで上高地から出てくることと私が勝手に決めています。 この「日帰り」という時間制約が私には非常にきつい条件でした。 これらのルートを行く場合、"雪"をどう利用するか、あるいは避けるかがキーポイントだと思います。 全6ルートのワンポイントとその記録へのリンクをまとめておきます。 ・東ルート 2015.06.07 明神岳東稜から主峰へ、そして5峰へ縦走 夏の東稜はブッシュがうるさいと聞いていたのでヒョウタン池までの雪が消えた直後を狙いました ・西ルート 2011.05.21 岳沢奥明神沢右俣(主峰と2峰のコルに詰め上がります)主峰へ登ってから5峰へ縦走 奥明神沢右俣がコルまで雪が残っている時を狙いました ・南ルート 2014.09.27 5峰西南稜から主峰へ、そして前穂高へ抜けます 稜線の雪が消えればいつでも大丈夫です ・北ルート 2014.05.31 岳沢奥明神沢から奥明神沢のコルへ、そして主峰から5峰へ縦走 奥明神沢がコルまで雪が繋がっていて稜線の雪が消えた時期を狙いました ・Exp1 前穂高ルート 2015.07.11 前穂高から主峰、5峰へと縦走(南ルートの逆コースです) 稜線の雪が消えればいつでも大丈夫です ・Exp2 松高ルンゼルート 2017.08.20 松高ルンゼ、奥又白池、A沢から主峰、5峰へと縦走(当記録です) A沢踏替点までの雪が消え、A沢には雪渓が多く残っている時期を狙いました